テレアポというのですか、セールスの電話ってよくかかってきますよね。あれって なかなか迷惑なものです。
 ぼくの家にも頻繁にかかってきます。
 受話器を取ると「あの××(普通の名字)ですけど、○○くん(ぼくの下の名前)いますか?」とかわいい声したおねえちゃんが友達のように話すんです。
 うっかり、家族がとったら本人につなぎやすいという狙いでもあるんでしょうね。男性には女性が、女性には男性がかけてきているようですし
 そこで今回はこの電話に対抗できる策を実行してみました。

CASE1 衝動のおもむくままに話してみる


 まずは衝動のおもむくままに話してみました。
 見知らぬ女性の声と話したいことを話してみようと考えたのだ。

「山岡と言いますけど、○○くん(ぼくの本名)いますか?」
「おれですけど」
「○○くんですか! あのはじめまして。わたくし××××××という会社で電話マーケティング調査をしているんですけど、アンケートに答えていただけないでしょうか? あの、お時間はありますか?」
「おれは大丈夫っすけど、山岡さんは時間あるの?」
「え?」
「時間あるかって訊いてるんだけど?」
「あ、はい、大丈夫ですよ。それでですね……」
 と言いかけたところでぼくは口を挟んだ。
「山岡さんってかわいいの?」
「はあ? あのアンケートのほうをはじめてよろしいでしょうか?」
 ぼくは山岡さんをシカトした。
「スリーサイズまではいいから、身長と体重教えてよ」
 しかし、山岡さんはこういう対応に慣れているようである。おそらくマニュアルでもあるのだろう。
「身長は100センチより高いです。体重は30キロ以上はあるよ」
「なんだそれ?」
 ぼくは思わず話にのってしまった。これがいけなかった。
 これからぼくは30分近く山岡さんとお互いのことを話した。時には山岡さんから「○○くんって芸能人でいえば誰に似てるの」と訊いてくることもあった。
 ぼくはへとへとに疲れた。質問責めにしようにも「初体験は18歳」、「好きな体位は正常位」と山岡さんに言われてしまえば、質問したいことも見つからなくない。
 そこでぼくの会話が止まったところで、山岡さんが話を本題に戻した。
「それでさ、○○くん、アンケートなんだけどさ、○○くんって働いてるの?」
「え、おれ、学生だよ」
 ガチャ! つーつーつーつー。

 学生と言った瞬間、山岡さんは、30分も語り合ったのにあっけなく電話を切ってしまった。それも力強く、怒ったようにガチャン! と。
 あんなに仲良く楽しげに話したのに、結局はお金が目当てなのね(セールスだから当然だが)、とぼくは寂しくなった。長い時間話したことで、捨てられた子犬を拾ったときのように情が移ってしまっていたのだ。
 その日は寝る直前まで、むなしくぼくは、耳に残っている声から山岡さんの顔を想像していた。
 これでは撃退どころではない。この実験は失敗だ。


CASE2 消息を絶った息子の父を演じる


 このような電話は、相手が友達のふりしてかけてきているだから、こちらも相手が本人の友達だと思いこんでいるふりをするといいのではないかと考えた。
 ぼくは男だから父親のふりをして、息子の悪い友達に接する父親を演じてみた。

「あの奥原ですけど、○○くんいますか?」
 受話器を取るとやっぱりまったく知らない名字の女の子が、ぼくの下の名前をなれなれしそうに言っている。
「え、あんたは○○の友達なんですか?」
 ぼくはわざと大げさに驚いた声をあげた。
 受話器の向こうの奥原さんは声を詰まらせる。
「いや、その、そういうわけではないんですけど……」
 尻込みしている奥原さん。ぼくは大声でたたみかけた。
「あなたは○○を知ってるんだね! 教えてください! いま、○○はどこにいるんです? 三年も家を空けて行方不明じゃないか。盆も正月も顔も見せん。どこにいるんですか?」
「いや、その、そういう関係じゃ……」
「じゃあ、どういう関係なんですか。みんな、おじいちゃん、おばあちゃんも心配してるんですよ。母さんなんか寝る前にいつも○○を思い出して三年泣き続けてるんだ! ○○は生きてるんですよね。それだけでも教えてください」
「すみません。なにも知らないんです」
ガチャ。

 なんと、あっさり奥原さんは電話を切った。あっけなく撃退できてしまったのだ。
 意外にプロ根性がないようだ。

 というわけで、iwaはCASE2をおすすめします。
 一度おためしあれ!


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