ある日の休日、fishとkiriはたこ焼きを焼いていました。
 そんな和やかな時間の中で、kiriは言わなくてもいいことを言いました。
「ねえ、fishちゃん、たこ焼きってどうしてこんな色なんだろうね」
「どうして?」
 思いも寄らぬ質問にfishは首をひねります。
 kiriは自信のこもった顔で答えました。
「だって、これってきつね色でしょう。これじゃ、きつね焼きじゃない。たこ焼きって言うくらいなら、やっぱり赤くなくちゃおかしいと思わない」
「思わない!」
 fishは即答しました。
 しかし、kiriは不満そうです。
 ふたりの間に気まずい空気が流れます。
 居心地の悪い時間を終わらせるために、fishはひらめきました。それじゃあ、赤いたこ焼きを作ってあげればいいんだ、と。
 そこでkiriはmasaに携帯電話のメールを打ちました。なぜなら、iwaの携帯電話はメールに加入してないからです。
「あのさ、いま、たこ焼き焼いてるんだけど、食紅を買ってきてくれない?」
「食紅っすね。わかりました」
 三十分後、masaは食紅を買って現れました。
 だが……masaの買ってきた食紅は、名前こそ「食紅」ですが、紅ではなく緑色でした。
「masaくん、これって……」
「食紅でしょ。ちゃんと買ってきましたよ」
 masaの顔には、忠実におつかいの言いつけを守った自信がみなぎっていました。
 だから、fishもkiriも愛想笑いをして緑色のたこ焼きを作るしかありませんでした。

 粉にmasaの買ってきた食紅を混ぜると、生地の様相は一変しました。
 真緑なのです。
 駄菓子「ねるねるねるね」のメロン味並みの緑色です。

 鉄板に流しても緑です。
 あたりまえのことですが、驚きでした。

 fishが手慣れた手つきでひっくり返すと、緑色のたこ焼きができました。
「まりも」みたいです。
 ひょっとしたら、北海道の摩周湖の名物になれるかもしれません。

 緊張した面もちでkiriができあがったたこ焼きをつまようじにさします。
 ソースを大量につけて、色を隠そうとしていますが、毒々しい緑は不気味さをますばかりです。

 思いきって、がぶりといきました。
「感想は?」
 fishが緊張して訊ねます。
 するとkiriは平然と、
「なん、普通のたこ焼きじゃん」
 ……まあ、当たり前と言えば当たり前だけど。
 とゆうわけで結論。

 あんまり実験の意味ないなあ。とほほ。
 なお、工夫すると、下のようなマーブル模様のたこ焼きも作れました。
 緑では、竜安寺の石の苔みたいに、日本庭園っぽいたこ焼きが楽しめました。
 それでもやっぱり味は、普通のたこ焼き。
 21世紀になっても、世の中、あんまり波乱はないみたいですね。

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