賞味期限切れの黒砂糖をこっそり食べさせる!
朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」も佳境に入り、沖縄がいま密かなブームだ。
この沖縄ブームに便乗するためにも、なにか沖縄に関する実験をしようではないか、と考えた。
我らがGO AHEAD!!は、かつて「うっちん茶」を実験に使用したこともあるほど微妙に沖縄びいきなのだ。
そこで、何かないかなあとためしに自宅をあせくったら、出てきました出てきました。
黒砂糖が。
「奄美特産」と書いてあるのがちょっぴり気になりますが、奄美も沖縄も地理に弱いバカなぼくにとっては同じようなもの。
今回はこの黒砂糖をkiriちゃんに食べてもらった。
更に今回は、ただ食べてもらうだけではない。
今回のブツはぼくが自宅から持ち込んだものだ。
ぼくの自宅は十年前のジュースが発見されたこともある、物持ちのいい場所だ。家族のものが無事に生きていることが不思議なぐらい賞味期限切れの食品が、忘れっぽい母親に忘れられて保管されている。
写真では見づらいのが残念だが、この黒砂糖の裏面に賞味期限が記されていた。見てみると、そこには「賞味期限・99年6月30日」の文字が……ちなみにこの日は2001年9月20日。
うーん、いい感じだね。ミレニアムをまたがっている。母親は家族にこれを食べさせる気だったのか、と疑心暗鬼にはなるけれど、そんなことは忘れよう(忘れないと家でごはんが食べられなくなる。死活問題なのだ)。
賞味期限が切れていることは、GO AHEAD!!にとってはいいことである。
人は賞味期限が切れていてもそれに気がつくのだろうか? と実験に付加価値がつくからだ。
「kiriちゃん、甘いもの食べたくない?」
話しかけると、kiriは疑わしい目つきでぼくを見た。
「なんか、たくらんでるでしょ」
これまでの数々の実験で、ぼくはkiriとの間に、「信用」という人間関係を円滑に保つために必要不可欠なものを、失っていた。
「いやいやいや。前に、うっちん茶って飲んでもらったじゃん。あれと同じ。せっかく南国の黒砂糖をもらったから、食べてるとこをGO
AHEAD!!用に写真に撮らせてもらいたいとは思ってるけど」
ぼくはカバンから黒砂糖を取り出した。
「これって、黒蜜を作るのに使うやつでしょ。本場のなんだ。わー。すごい。食べる食べる」
「そうそう、甘いし、滋養がつくし、食べようや」
そう言って、食べさせることには成功した。
「おいしい。甘いものって、疲れがとれるよね。いいよね。おいしいよ」
kiriは上機嫌で食べてくれた。
これまでのGO AHEAD!!でkiriがこんなに喜んで食べ物を食べたことがあっただろうか、と思うほどノリノリで、カメラを向けると自然にポーズまでしてくれた。さすがはプリクラ世代である。
ぼくはそんなkiriを見て、
「なるほど。賞味期限が切れてても、人は案外気にしないものなんだ。知らぬが仏だな。知らなければ、それはそれでおいしく食べられるようだ」
と、実験結果を頭でまとめていた。
この実験はここで無事に終わるはずだった。
しかし、人生において、物事が思い通りに進むことはまれである。
「おいしかった。お母さんに持って帰ってもいい?」
お茶を飲みながらkiriが言う。
そのとき、kiriは賞味期限が記載されている袋を手に取った……。
逃げる準備をしながらkiriの様子をうかがう。
kiriは裏面に書いてある「黒砂糖はサトウキビを搾り……」という商品の逸話を読んでいる。
バレるのも時間の問題だろう。
kiriが気づきませんように。
ぼくは、普段はまったく信じていない神に祈った。
もし、神様とやらがいたとしても、人をだますことを手伝うとは思えない。
ましてや、祈る奴が賽銭泥棒をしたこともあるクズならば、神様が救ってくれるはずがない。
ぼくは、たまに自分がピンチになると神に祈っていたが、これまで一度もうまくいった試しがなかった。
そして、ときは来た。
「iwaりん?」
kiriの低く押し殺した声。明らかに怒っている。
やばい。逃げなければ!
というわけでぼくは、怒ったkiriの写真を二枚撮って逃げてきた。
下の写真はそのとき撮影した怒るkiriである。
目がマジ切れでものすごく怖い。
無事逃げてこれてよかったと胸をなで下ろす思いだ。
結局、賞味期限切れは、ものにもよるだろうが、黒砂糖なら大丈夫なようである。
だけど、バレたら間違いなく痛い目にあいます。
それまで「おいしい、おいしい」と食べていた人ほど、その怒りは強いです。
このkiriの写真を見ていただければ、おわかりになると思います。
逃げてきたので、ちゃんと言えませんでした。だから、ここで言います。
「kiriちゃん、ごめんなさい」